醤油の製造方法

基本的な製造法(本醸造・こいくちしょうゆ)

現在、国内で生産されている醤油の大半が本醸造であり、また濃口が大半を占める。
本醸造」の条件は、大豆、麦、米等の穀物を蒸煮し、麹菌を用いて作成した麹に、塩水または生揚げを混合して発酵・熟成させたものを指します。
麹に、蒸した米や甘酒を添加したり、分解を促進するための、セルラーゼ等の酵素を添加することも許されています。
(ただしプロテアーゼを除く)
JAS特級の条件には「本醸造であること」という項目も含まれているため、特級醤油であれば常に本醸造醤油です。

 

<原料工程>

大豆(または脱脂加工大豆)は浸水し、膨潤したところで圧力をかけて蒸煮する。
小麦は焙煎し、割砕して荒い粉末状にする。
加熱条件には留意する。
これは、生の大豆タンパク質が最終工程に残ると製品(加熱時)の濁りにつながり、小麦の生デンプンは、一般的な醤油酵母は資化できないためです。

<製造工程 >

製麹(せいきく)工程

蒸煮大豆と割砕小麦を約1:1で混合したものに種麹を加えて混ぜ、高湿度下で3・4日程度培養を行い醤油麹を作る。
麹菌には、主にショウユコウジカビ用いられ、ニホンコウジカビが使用されることもある。


仕込工程(前期)

醤油麹に塩水を加え、麹の塊を崩して混合しながら醸造タンクに移送することを「仕込工程」と呼び、麹と塩水の混合物を諸味と呼ぶ。
麹由来の酵素により蛋白質アミノ酸に、デンプン質は糖に分解される。


仕込工程(中期)

諸味内にて微生物による発酵が起きる。
まずは乳酸菌により乳酸が作られ、諸味全体が酸性に傾く。
次に、酵母により、アルコール発酵が起きる。
醤油の香りの成分の多くはこの工程で発生する。


仕込工程(後期)

「後熟工程」とも呼ばれ、味・香を熟成させる工程。
活発な発酵は行われず、アミノグリコシド反応等の、比較的静かな反応が続く。
この時期にはCandida属酵母による香気成分の生成が行われる。
淡口醤油の場合、仕込工程の末期に甘酒や米麹を添加することがある。


圧搾工程

ナイロン等丈夫な素材で作られた「圧搾布」に諸味を包んで加重し、固体と液体を分離する。
液体が「生醤油」、固体が「醤油粕」である。
この際、主に大豆由来の油脂が分離して液面に浮かぶ。
これを「醤油油(しょうゆあぶら)」と呼ぶ。
醤油油は微生物による分解や酸化のため、食用油脂としての利用はできない。
また、醤油粕も利用価値が低いことから、メーカーは処分に苦慮することが多い。

 

火入工程

圧搾工程で得られた生醤油には、醸造工程で含まれた各種酵素などのタンパク質が多く含まれている。
これを加熱すると、タンパク質は熱変性して不溶化し、沈殿する。
また、製品に焦げた臭い(焦げ香)をつけ、微生物を殺す。
一般的にはプレートヒーター等を用い、熱がかかりすぎないように留意する。
熱履歴が高い場合は製品の色が黒色を呈し、焦げ香が強くなりすぎることになる。

 

清澄・濾過工程

沈殿除去、珪藻土濾過や精密濾過などを用い、醤油に含まれる変性タンパク質など不溶性固形分を除去する。
製品醤油の濁りは品質的には製品事故となる。
ここで生醤油は、「火入醤油」と、沈殿分・濾過除去された分の「オリ」に分けられる。

 

詰工程

火入醤油に適切な成分調整を加え、容器に詰めて製品とする。